詩 「ビック・アンカー」  ーパンドラの箱ー


2001/08/15 (Wed) 11:57




海の伝説 ~『ビック・アンカー』~ 




      『ビック・アンカー』

そのいかりは、青い色の光しか届かない、海に沈んでいました。
昔々は、まったく光の届かない、深い深い海の底に沈んでいました。
そのいかりは、いろいろな思い出を持っていました。
遠い遠い昔、いろいろなところを旅していましたから。
悲しい思い出、淋しい思い出、たぶん楽しい思い出もあったのでしょう。
でも、いかりはそれがどんな出来事だったのか、誰と一緒だったのか覚えていません。
ただ結晶のように、思い出のあった感覚だけがありました。
もしかしたら、昔はいかりではなくて、人間だったのかもしれない。
魚だったのかもしれない。
でも、そんなことは、もう、どっちでもいいことでした。

海底は少しずつ動いていました。
何百年、何千年たったのかわかりません。

  ふと気がつくと、青い世界にいました。

青色の波長の光だけが届く海の底。
青一色だけど、やさしい青でした。
少しずつ結晶になった想いも、青色になってとけていきました。

時々、魚やダイバーたちが「ビック・アンカー」と呼ばれる、その場所に来るようになりました。
海の中が、スコーンとぬけるような、青色に見える時が、年に何度か訪れます。
そんな時、いかりと水面のちょうど間に浮かんだものたちは
上も、下も、右も、左もない、その空間で、一瞬にして一億年の想いを感じるといいます。

  それは

とてもとても、優しくて、幸せで、孤独で、恐くて、淋しい
生も死もない  永遠の一瞬  なのです




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追記

「ビック・アンカー」というのは、実際にあるダイビング・ポイントの名前です。
名前の通り、大きないかりが沈んでいる、とても神秘的な場所でした。
なかなか潜れる条件のお天気にならないのが難点らしいのですが、
私はとてもいい条件の時に潜れたようです。 







             

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